2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は、オリンピックでの20年5月~11月の7カ月間の神宮球場の借用を要請し、球場を利用しているプロ野球ヤクルト、東京六大学、東都大学の各野球連盟などの使用団体代表者が、7カ月間も使用できない状態は受け入れられないと、反発を強めています。
スポーツ愛の全く感じられない、突然の頭ごなしの使用中止要求に、本当に、オリンピックを実施する団体なのかと、首をひねる事態となっています。
組織委は球場のグラウンドに大会役員やボランティアの待機場所として大量のプレハブ施設やブースを設営するほか、資材などの保管場所に使うことを想定し、人工芝を剥がすなど、球場の仕様変更も予定しているとの事。
競技の実施等での借用であれば、まだ、納得がいくところですが、資材置き場、待避所等の用途で、全く1シーズンが使えず、代替案も無いとのこと。同じスポーツの大きな試合を持ってい団体に対して、この上から目線の扱いは、運営者としての資質を疑います。
既に、2020のオリンピックは失敗してしまった。と未来予測の過去形で話せるレベルではないでしょうか。
神宮球場は、20年大会のメイン会場となる新国立競技場が建設される明治神宮外苑内にあり、東京五輪・パラリンピック組織委員会の佐藤広副事務総長らは11日、都内のプロ野球ヤクルト球団と東京六大学野球連盟の事務所を訪れ、明治神宮野球場を長期借用できるよう目的などを説明し、理解を求めました。
佐藤副事務総長は「交渉はこれから。(補償の話は)していない」などと話し、期間については「決定ではない」との説明もあり、短縮など交渉の余地はあるとみられるが、夏に東西東京都大会を開催する東京都高校野球連盟なども、現時点で代替球場はなく、長期使用できなくなれば影響は大きくなります。
同球場を本拠地とするプロ野球ヤクルト、リーグ戦を春秋開催する東京六大学、東都大学の各野球連盟などの使用団体代表者は26日、東京都内で組織委と初交渉を持ち、球場を管理する明治神宮外苑と使用団体の総意として、7カ月間も使用できない状態は受け入れられないと伝えました。
合わせて人工芝を剥がすなど、球場の仕様変更をしない形での借用期間短縮を組織委に求めています。
今年の東京六大学野球の春季リーグ戦が開幕する中、観客からも「使用中止なら五輪開催もやめた方がいい」などの反対意見が続出。
もちろん、同球場を本拠地とするヤクルトファンも中止撤回へ声を上げています。
問題が表面化した際に遠藤利明五輪相が「なぜ大事になるのか分からない」と発言するにいたっては、オリンピックを、単なる外交の道具としてしか見ていないのではないかと怒りが噴出。
本来のスポーツマインドに対する侮辱とも受け取れます。
神宮球場の所有者は宗教法人明治神宮で、組織委は、関係組織に何の打診も無く、この明治神宮に使用中止の要請をしたことも、問題をこじらせた要因です。
つまり、組織委は地権者の明治神宮に「五輪期間前後は貸与しないで」と要請したことになり、事実上の追い出しである。
しかも、オリンピック期間の1ヵ月半ではなく、5月から11月末までの半年に及び、加えて、それに伴う補償や代替球場の話も出ていないという。
神宮球場が長期間使用中止ということになれば、代わりの球場を探さなければならない。賃貸の交渉をはじめ、大きな労力が必要となる。
東京の、神宮球場という地の利から、多くの観客が呼び込め、入場料収入が見込めるが、その収入が一年分なくなるのです。
本来であれば、まず使用する側に補償や代替球場などを含めて提案し、協力を得るのが筋でしょう。
五輪は国家的事業だからといって、そうした手続きを怠る組織委の姿勢は傲慢であり、なおかつ、イベント企画運営として稚拙です。
経済的にも、ヤクルト球団だけを見ても大きな打撃となります。
球場には多くの企業が看板広告を出しているが、一シーズンまるごと、広告収入がなくなり、次期の契約も再開されるかわかりません。
ホームゲーム全試合が見られる年間シートも、1席30万円程度で、多くは企業が契約しています。
神宮球場は交通の便が良く気軽に観戦できるため、得意先を招待したり、それがない時は社員の福利厚生に利用されます。
この年間シートも継続購入がほとんどで、一度契約が途切れれば、再購入してもらうには、一からの営業となります。
老朽化した神宮球場と秩父宮ラグビー場を建て直し、神宮外苑をスポーツの一大拠点にしようという計画の一貫ではあるが、その入れ物をなぜ作り、どのようなソフトで運用するかという具体案の提示がないから、怒りだけが出てきます。
計画で聞こえてくるのは、東京五輪までに秩父宮ラグビー場を解体して駐車場にし、五輪後にその跡地に新神宮球場を建設。その間に旧神宮球場を取り壊し、そこに新秩父宮ラグビー場を建設するというもの。
確かに神宮球場も秩父宮ラグビー場も老朽化しており、改築が必要な時期にきていますが、使い方の具体案がありません。
新球場がヤクルトの本拠地と決まっていれば、球団も、多くのファンも協力するでしょう。
しかし、そこにはソフトが無く、国家計画として、スポーツ施設という新しい箱物を作りたいという、運用を伴わない計画が騒動に発展していまます。
この考えでは絶対本番のオリンピックは後世に失敗の記録として語り草になってしまいます。
東京オリンピックが、国民全体の行事ではなく、政治的行事、利権者の収益だけの場にならないように、もっと多くの知恵が必要ではないでしょうか。